デコーダ焼損に対する対応と原因及び回避方法について             更新2011/01/11


最近、DCCの組み込みにあたりデコーダを焼損してしまうユーザが増えています。ここで、メーカとして、モータデコーダの設計思想と焼損に対する基本的な対応方法と、組込みに際して留意する点を整理します。

特にNGDCCデコーダの購入に当たっては、以下の条件を十分ご理解いただいたうえで、判断をしていただきたいと思います、

  1. 焼損したデコーダに対する、初期不良対応はいたしません。

  2. コマンドステーションの出力を、約0.1A程度に制限した状態で、組込みテストを行ってください。
    →弊社 DP1(通称赤い箱)のUSB電源によるテストをお勧めします。NGDCCデコーダはこれにより全数通電チェックを実施しています。

デコーダ焼損の発生理由

  1. モータ出力同士のショート

  2. モータ出力のデコーダ内部配線へのショート

  3. モータ出力の線路入力へのショート

  4. モータ出力の過負荷による過電流

  5. デコーダ不良

1.モータ出力同士のショート

これは、もっともわかりやすい原因ですが、現実的にはあまり、発生していません。理由として、回避しやすいことと、テスト走行時に十分スロットルを絞れば、実際にショートしていても、フルスロットルにしなければ、比較的焼損しにくいです。

2.モータ出力、線路入力の、デコーダ内部配線へのショート

これは、ユーザが自覚しにくいケースです。
この図は、ショートの一例ですが、赤丸の3箇所で、モータ出力ランドの周りを囲むGNDパターンとショートしている可能性があります。

右上の部分は、配線の先端が触れている可能性があるのでわかりやすいですが、その他2つは、溶けた半田によってブリッジしています。

このような、状況でショートする、走行方向によっては、問題が発覚せず。走行方向を切り替えると同時に焼損する結果となり、デコーダ不良が疑われる結果となります。このケースは比較的多いです。なぜこういった現象がおきるかを、モータデコーダのブロック図で説明いたします。

一般的なDCCデコーダのモータ駆動部のブロック図を示します、

通常動作で、SW1=on ,SW4=onによってモータが前進方向に回ります。SW3=on SW2=onで後進方向に回ります。

 

ここで、上図の例のように、M+〜GNDが短絡しているケースですと。SW3=on ,SW2=onの時には問題はおきませんが、

前進方向、すなわち、SW1=onのときに、V+〜GNDが短絡する結果となり、デコーダのもっとも弱い部分が焼損いたします。

まず、SW1が焼損します。もし、SW1が定格内であれば、整流回路、もしくは配線パターンの順番になります。運がよければ、コマンドステーションのブレーカが作動します。

なぜ焼損するかというと、12V5Aのコマンドステーションを単純に考えた場合、ショートすれば、60Wの電力が集中するからです。コマンドステーションによってはブレーカの感度によりすくわれるケースもありますが、逆に通常運転でもブレーカが作動しやすくなるので良し悪しです。

 

3.モータ出力の線路入力へのショート

これは、ブラスモデル等の金属性車輌に見られるケースです。ブラスモデルの台車には、集電の方法により、片側の線路の電気が通電する構造のものが多々あります。また、台車と躯体間の絶縁も実施されていないケースですと、車体全体に電流が流れている状態となります。

この場合、モーター出力線のハンダ付け処理によっては、ケーブルの一部が接触しているケースがあり、”2.”と同様のショートが起こりえます。

また、特徴として、一方向に全速力で暴走することもあります。

4.モータ出力の過負荷による過電流

古い模型のモータですと、数Aもの電流が流れるものも存在しますが、近年のモータですと、0.1-0.3A程度と非常に性能が良くなっています。ただし、最大電流で考えると、通常使用では、0.1A程度しか流れないものが、モータの軸を固定させたり、負荷が重くなったときに、数A流れてしまうものが多々あります。一般的に、レスポンスの良い高性能なコアレスモータにこの傾向が強く見られます。

モータ出力電流の測定方法

モータ出力電流の測定は、電流計が必要ですが、通常の電流計ですとピーク値を測ることが出来ません。

左の例ですと、ピーク期間によっては、実際には1A流れているにもかかわらず、電流計では低く表示されます。このような場合、たとえば、0.5A出力のデコーダでは焼損する可能性があります。

ただ、電子部品の特徴として、多少定格を超えていても即破損につながらないケースがあり、そのような場合、デコーダを組み込んでしばらく問題なく使えていたのにある日突然燃えてしまうという可能性があります。

 

簡易的に、モータの最大電流を測定するためには、軸を固定して通電することです。ただし、これを実施するためには、モータ自身の定格を超えないように気をつける必要があります。また、怪我をしないように注意してください。手際が悪い場合モータ自身を破損させてしまう可能性があります。

  1. 電圧を、コマンドステーションの出力電圧と同じような設定にします。 12V-15V程度

  2. 無負荷電流の測定

  3. 軸をロックした上での測定。

ここで、注意することは、軸をロックしたとしても、軸をロックした瞬間には、上記測定値よりより多くの電流が流れることです。

上記測定を行った場合、電圧設定により、軸ロック電流値が大幅に異なることに気づくかもしれません。これは、コマンドステーションの電圧設定によっては、焼損しやすくなることを示しています。電圧が低いほど、電流が流れにくいことは云うまでもありません。

5.デコーダ不良

デコーダ不良による焼損のケースは、配線取付け部のショートにより起こりえます。これは、出荷時通電テストを行っていても、見逃すことがあります。これについては、組込み直後のテストにより回避していただくしかありません。コネクタタイプのデコーダではありえません。

デコーダ初期不良による不具合の現象は、焼損ではなく、ほとんどは、動かないという形で現れます。

 

デコーダ焼損回避のためのテスト手順

模型本体テスト

  1. 線路入力部(L/R)のショートテスト

  2. 金属車輌であれば、線路入力部(+/-)と車輌本体との絶縁テスト

  3. モータ入力部のショートテスト(ショートしていれば 0 ohmになるはずです)

  4. モータ入力部(+/-)と、線路入力部(L/R)との絶縁テスト

  5. モータ入力部(+/-)と車輌本体との絶縁テスト

組込み直後のテスト

コマンドステーションの電流が0.1A以上流れないように設定。100ohm (2W)程度の抵抗を直列に挿入するか、弊社DP1(赤い箱)を外部電源をはずした状態で使用。もしくは、006P 9V電池による DCテスト を参考にしてください。

  1. 前進、後進とも起動することを確認。電流が少ないのでうまく起動できないこともありますが、ショートしている場合には、特徴的な挙動を示します。モータが動こうとする以前に、たとえば、ライトが消える等のデコーダリセットが掛かる場合には、ショートが疑われます。

  2. 通電するやいなや、抵抗が熱くなったり、赤い箱の、赤のインジケータが消える場合もショートが発生しています。

  3. 上記の現象が起きた場合には、即通電を停止してください。焼損を回避できる確率が高くなります。